不動産売却に必要な「登記簿謄本」の取得方法や見方とは?

売却向けコラム

灘野 博史

筆者 灘野 博史

不動産キャリア10年

愛媛県生まれなこともあり、夏、冬問わず主にアウトドアが好きですが国内外でのミュージカルなどを観劇することも大好きです。
築古戸建て投資から不動産をスタートし建築やDIYも得意です。

日本国内は全ての都道府県に旅行し、海外旅行も50か国以上は旅をしました。
各地の不動産(住宅や歴史的な建造物)を見ながら世界遺産や郷土グルメを食すのも楽しんでいます。

不動産売却に必要な「登記簿謄本」の取得方法や見方とは?

不動産を売却する際に、契約相手や金融機関から「登記簿謄本を用意してください」と言われることがあります。
しかし、登記簿謄本は普段馴染みが薄い書類のため、「どこで取得できるのか?」「どうやって情報を読み取るのか?」と戸惑う方も多いでしょう。
そこで今回は、不動産の登記簿謄本とはなにかに加えて、その取得方法や、見方について詳しく解説します。

不動産売却に必要な「登記簿謄本」とは?

不動産売却に必要な「登記簿謄本」とは?

不動産の登記簿謄本を理解するためには、まず「不動産登記」について知る必要があります。
不動産登記とは、土地や建物に関する権利関係を記録し、社会に公示する制度です。
例えば、ある土地の場所や面積、所有者や担保権者などが不動産登記に記録されます。
不動産登記は、不動産の外観からは分からない情報をデータとして記録し、公開します。
これにより、安全かつ円滑な不動産取引を実現します。
不動産にまつわる登記記録については、基本的に「不動産登記簿」にまとめられています。
「登記簿謄本」とは、不動産登記簿を出力した紙に法務局の印鑑が押された書類のことで、土地や建物、マンションなどの不動産の所有者を証明するためのものです。
所有者の名前だけでなく、住所、物件の所在、地積や床面積、地目や構造、取得年月日や設定されている権利なども記載されています。
ちなみに「謄本」とは、原本の内容をそのまま全部写し取った書面のことです。
不動産に関しては、法務省が個々の不動産について情報を記載した「登記簿」を管理しています。
登記簿が電子データ化されていない時代には、各法務局に保管されている登記簿を写し取って交付していたため、「登記簿謄本」と呼ばれていました。
現在では登記簿の内容がデータ化されているため、文字通りの写しは存在しません。
代わりに、「登記事項証明書」という名称の書類が交付されますが、記載内容は従来の「登記簿謄本」と同じです。
この記事では、従来から慣れ親しまれている「登記簿謄本」という表現を用いて解説します。

登記簿謄本の種類

不動産の登記簿謄本は、記載内容に応じて以下の5種類に分かれます。
全部事項証明書
全部事項証明書は、すべての登記情報が記載された証明書です。
現在の情報だけでなく、過去の変更履歴も含まれます。
どの証明書を取得すべきか迷った場合は、基本的に全部事項証明書を選べば間違いありません。
現在事項証明書
現在事項証明書は、現在効力を持つ情報のみが記載された証明書です。
抹消された抵当権や前の所有者などが記載されていないため、現状を把握しやすくなっています。
一部事項証明書
一部事項証明書は、特定部分のみが記載された証明書です。
全部事項証明書だと書類が膨大で分かりにくい場合に、一部事項証明書で必要な部分だけを抜粋して使用します。
所有者事項証明書
所有者事項証明書は、不動産の所有者や共有者の住所、氏名、持分などの情報のみが記載された証明書です。
住宅ローンの抵当権などは記載されていません。
閉鎖事項証明書
閉鎖事項証明書は、過去の登記情報を確認するための証明書です。
取り壊された建物や、土地の合筆(複数の土地を一つにまとめること)により閉鎖された土地などの情報を知りたい場合に取得します。

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登記簿謄本はいつ必要?登記簿謄本が必要な場面や取得方法

登記簿謄本はいつ必要?登記簿謄本が必要な場面や取得方法

登記簿謄本は、不動産の売却や相続、住宅ローンを利用する際などに必要になることが多いです。
登記簿謄本を取得するには、4つの方法があります。

登記簿謄本が必要な場面

登記簿謄本は、主に以下のような不動産取引で必要です。

●土地や建物の売却
●住宅ローン申請
●相続


これらの取引では、売買契約書の内容や名義が一致しているかを確認するために使用されます。
また、住宅ローン完済時に不動産の持ち主が変更になる場合にも必要です。
その他、会社設立時や確定申告時にも使用されます。
会社設立の場合、補助金の申請や金融機関からの融資を受ける際に必要となり、確定申告では「住宅ローン控除」を申請する際に提出が求められます。

登記簿謄本の取得方法と費用

登記簿謄本を取得する方法は、以下の4つの方法があります。
①法務局の窓口へ行く
最寄りの登記所(法務局・支局・出張所)の窓口で申請できます。
申請後、その日のうちに登記簿謄本を受け取ることができます。
費用は600円で、支払いは収入印紙でおこなうことが原則です。
②郵送で交付請求する
登記所が遠方にある場合や、平日に行くことが難しい場合には、郵送での申請が便利です。
交付申請書を郵送すると、自宅や職場へ登記事項証明書が返送されます。
時間はかかりますが、自宅から手続きできる点がメリットです。
費用は600円で、支払いは収入印紙でおこないます。
③オンラインで交付請求する
インターネットを利用して証明書の交付を請求し、郵送または窓口で受け取る方法です。
窓口や郵送での申請に比べて手数料が安く、電子納付ができます。
利用可能時間は平日の8:30~21:00です。
オンライン請求の費用は、窓口で受け取る場合480円、郵送で受け取る場合500円となっています。
なお、支払いは電子納付のみです。
④インターネットで登記情報を確認する
公的な書類が不要で、登記情報を見るだけで良い場合は、オンライン閲覧が便利です。
オンライン閲覧サービスを利用する場合、費用は月額3万円以内でクレジットカード決済が利用できます。
利用可能時間は平日の8:30~21:00です。
費用は、全部事項の確認が332円で、支払いはクレジットカードでおこないます。

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不動産の登記簿謄本の構成と見方

不動産の登記簿謄本の構成と見方

登記簿謄本は、「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」「共同担保目録」の4部構成です。
ただし、全ての不動産がこの構成になっているわけではなく、表題部のみや、表題部と権利部(甲区)のみのものもあります。
登記は通常、表題部 → 権利部(甲区) → 権利部(乙区)の順におこなわれるためです。
それぞれの欄の役割と意味を理解することが大切です。

表題部の内容と見方

表題部は、不動産の基本情報です。
所在地、面積、構造などが記載され、土地と建物それぞれで記載項目が異なります。
土地の表題部の見方

●所在:土地の場所が市町村字まで記載される
●地番:土地に付与される番号が記載される
●地目:土地の用途・種類(例:「宅地」「田」「畑」)
●地積:土地の面積
●登記の日付:登記された日付とその原因


建物の表題部の見方

●所在:建物の場所が市町村字および番地まで記載される
●家屋番号:建物に付与される番号
●種類:建物の種類(例:「居宅」「事務所」)
●構造:構成材料、屋根の種類、階層
●床面積:各階の床面積
●登記の日付:新築日と表示登記の日付

権利部(甲区)の内容と見方

権利部(甲区)には、所有権に関する情報が記載されており、現在および過去の所有者がわかります。
権利部(甲区)の見方

●順位番号:登記の順番
●登記の目的:所有権が登記された目的(例:「所有権移転」「所有権保存」)
●受付年月日・受付番号:登記の受付日と番号
●権利者その他の事項:所有者の住所・氏名、登記原因

権利部(乙区)の内容と見方

権利部(乙区)には、抵当権や賃借権など、所有権以外の権利が記載されます。
これを見ることで、不動産に対する他者の権利状況がわかります。
権利部(乙区)の見方

●順位番号:登記の順番
●登記の目的:所有権以外の権利の登記目的
●受付年月日・受付番号:登記の受付日と番号
●権利者その他の事項:権利内容、権利者の氏名、原因

共同担保目録の内容と見方

共同担保目録は、複数の不動産が担保として提供された場合、それらをまとめて記載する欄です。
権利部(乙区)の抵当権とあわせて参照します。
例えば、住宅ローンを利用して一戸建てを購入する際、土地と建物を担保に提供し、どちらにも同じ抵当権が設定されます。
この場合、土地または建物の登記簿謄本を見れば、共同担保目録に両方の記載があるため、両方に抵当権が設定されていることがわかるでしょう。

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まとめ

不動産の権利関係を記録する登記簿謄本には、物件の所在や所有者情報、抵当権などが記載されており、不動産売却で必要です。
取得方法は、法務局窓口、郵送、オンライン請求、インターネット閲覧があり、それぞれ費用と手続きが異なります。
なお登記簿謄本は、表題部、権利部(甲区、乙区)、共同担保目録の4部構成です。


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