不動産売却における割賦販売とは?メリットとデメリットも説明

売却向けコラム

灘野 博史

筆者 灘野 博史

不動産キャリア10年

愛媛県生まれなこともあり、夏、冬問わず主にアウトドアが好きですが国内外でのミュージカルなどを観劇することも大好きです。
築古戸建て投資から不動産をスタートし建築やDIYも得意です。

日本国内は全ての都道府県に旅行し、海外旅行も50か国以上は旅をしました。
各地の不動産(住宅や歴史的な建造物)を見ながら世界遺産や郷土グルメを食すのも楽しんでいます。

不動産売却における割賦販売とは?メリットとデメリットも説明

利用が見込めない空き家を売りに出しているのに、長い間、買主がみつからずに困っている方が少なくありません。
ところで、買主が見つからない理由の1つに、住宅ローンを利用できないケースがあるのをご存じでしょうか。
この記事では、不動産売却における割賦販売のメリットとデメリットもご説明するので、土地や建物の売り出しを考えている方はお役立てください。

不動産売却における割賦販売とは

不動産売却における割賦販売とは

現在は、金融機関による住宅ローンが浸透していますが、かつては土地や建物の取引が割賦販売でおこなわれていた時代がありました。
ここでは、不動産売却における割賦販売の概要についてご説明します。

割賦販売とは

割賦販売とは商品を引き渡すときに代金を一括して受け取らず、分割払いにより販売する方法です。
割賦販売法では、商品の代金を2か月以上や3回以上の分割で回収する方式のほかクレジットカードによる販売を割賦販売と定義しています。
不動産物件の売買においても、令和に入ってから割賦販売がみられるようになっています。

不動産を売るときの売却代金

土地や建物を売るときは、売買契約を結ぶ際に買主から手付金を受領するとともに、物件の引渡しと同時に残りの代金を受け取るのが一般的です。
割賦販売により不動産を売却した売主は、物件を引渡したうえで、1年以上の長期にわたったり2回以上に分割したりして売買代金を受領しています。
分割払いになると、買主側としては、不動産をクレジットカードにおけるリボ払いで買うような感覚になるでしょう。

住宅ローン

マイホームを購入するときには、ほとんどの方が金融機関による住宅ローンを利用します。
住宅ローンを組むうえで審査を受けますが、さまざまな理由によって審査を通過できないケースがあります。
売主が親族のときには、親族間売買となりローンの審査を通過するのは困難です。
起業したばかりで給与所得を得られない方や転職などによって勤続年数が短いケースも、金融機関から厳しい審査を受ける傾向があります。
したがって、買主が知人であって、住宅ローンを利用できない事情があるときに支払いの分割を認めるケースがみられます。
また、再構築不可物件など資産価値が低い訳あり物件は住宅ローンの審査を通過しにくく、買主をみつけるのが難しくなるでしょう。
割賦販売にすると住宅ローンの利用が困難な物件でも買主をみつけやすくなり、訳あり物件の売却を進めるときには有効です。

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不動産売却における割賦販売のメリット

不動産売却における割賦販売のメリット

ここでは、不動産の割賦販売におけるメリットについてご説明するので、参考にしてください。

親族間売買

土地や建物を親族間で取引するうえで贈与の方法がありますが、譲り受けた側に高額な贈与税の費用負担が発生します。
したがって、贈与税の支払いが発生しない売買の方法によって所有権を移転するケースが少なくありません。
ただし、親族間など売主と買主が特別な関係にあるときには金融機関から住宅ローンを借り入れるのが困難であり、買主は資金調達に苦労する可能性があります。
分割払いが可能になると、買主側においては、自己資金がなくても物件を手に入れやすくなる点が大きなメリットになります。
売主にとって分割払いにするメリットはありませんが、買主が一般の方とは違って親族であれば、売買契約に向けた協議が整う可能性が高いでしょう。
また、長期間にわたる分割払いは未払いのリスクがあり売主が嫌うのが一般的ではありますが、親族間になると認めてもらえるかもしれません。

住宅ローンを借りられない物件

土地や建物のなかには、資産価値が低く住宅ローンを利用できない物件があります。
たとえば、築年数が古くて老朽化している建物や、再建築不可物件などがあげられます。
再建築不可物件とは、旗竿地など道路と接している長さが2mに満たない敷地などです。
割賦販売による取引においては、住宅ローンを利用する必要がありません。
老朽化している建物や再建築不可物件などを売りに出してから長期間が過ぎているときには、分割払いを検討すると良いでしょう。

買主がみつかる可能性の拡充

土地や建物など物件の条件に関わらず、購入希望者が何らかの事情によって住宅ローンを借りられないケースがあります。
住宅ローンの審査では、年齢のほか年収、金属年数、自動車ローンや就学資金などの他の借金にともなう返済負担率、個人信用情報の事故歴などについて厳しく審査されます。
また、健康状態にともない団体信用生命保険へ加入できない点が理由になって、住宅ローンを組めない方もいるでしょう。
住宅ローンを利用できないときには自己資金を融通する必要があり、高額な物件を購入するにはハードルが高くなってしまいます。
分割払いを認めると、自己資金のない方など購入希望者の対象が広がります。

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不動産売却における割賦販売のデメリット

不動産売却における割賦販売のデメリット

不動産の割賦販売にはメリットがある一方で、デメリットがある点に注意しなければなりません。

所有権移転登記のタイミング

通常の売買においては、売買代金の全額の決済を終えると同時に所有権移転登記の手続きをおこないます。
割賦販売のときには全額を受け取るまでに時間がかかり、長期にわたって所有権を移転できないと、買主は売主から物件の所有権を移転されるのか不安になるでしょう。
一方、契約を結ぶ時点で所有権を移転すると、売主は売却代金の回収に関してリスクを負わなければなりません。
所有権を移転すると、買主が物件を担保に借金する可能性があるとともに、破産により物件を差し押さえられると売却代金が支払われないだけではなく不動産を失います。
所有権移転登記のタイミングが難しい点が、分割払いの取引におけるデメリットの1つです。
なお、売却代金の回収リスクを回避する対策として、強制執行認諾文言付公正証書の作成と不動産に抵当権を設定する方法があります。
強制執行認諾文言付公正証書とは、買主の支払いが滞った際に、裁判をおこなわなくても強制的に一括で債権を回収できる証書です。
また、物件に抵当権を設定しておくと、滞納されたときに不動産を売却して残金を回収できます。

家族間でのトラブル

親の財産を子どもに売るときに、複数の子どもがいるなど相続人が多いとトラブルに発展しかねません。
売却代金が未済のケースでは、相続が開始されると兄弟間で債権者と債務者の関係になってしまいます。
売却代金の受け取りを終えているとしても、そもそもの売買契約の際に理解を得ていないと、関係者の不満が爆発して大きなトラブルに発展する可能性があります。
したがって、家族間で売買をおこなう際には、すべての関係者からの理解を得ておきましょう。

贈与の疑い

親族間での売買では、相場に比べて低廉な金額で取引がおこなわれる傾向があるとともに、利息分の利率を定めず無利息にするケースがみられます。
こうした行為は、税務署に贈与を疑われるかもしれません。
疑いを免れるうえでの基準はありませんが、念のため、住宅ローンの利息を参考にするなど利息を設定しておくと良いでしょう。

住宅ローンの残債

子どもなどへ早く物件を引き継ごうと考えて、子どもが購入しやすいよう割賦販売を選択する親は少なくありません。
ところが、焦ったあまり、住宅ローンの残債があって物件に抵当権が設定されているケースがみられます。
住宅ローンを完済していないときには、金融機関からの了解を得ない状態で売買するのは認められません。
完済していたとしても抵当権抹消登記を終えているか、登記簿謄本で確認しましょう。

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まとめ

親族間の売買などでみられる分割払いは、一般的な売却においても買主をみつけやすいなどのメリットがあります。
ただし、売却代金の回収に関するリスクを負わなければなりません。
強制執行認諾文言付公正証書など対策の方法がありますが、割賦販売に取り組む際には後悔しないよう、慎重に判断するようにしましょう。


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