不動産の相続登記が義務化されたのはなぜ?改正の内容や罰則を解説
相続で不動産を受け継いだ際に相続登記が義務となった背景や、罰則について知りたい方もいるでしょう。
この記事では、義務となった具体的な内容や罰則、新たに設けられた制度について解説をしています。
また、故人の土地を相続したくない場合の対処法についても解説しています。
相続する予定があり悩んでいる方は、ご参考になさってください。
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相続登記が義務化された背景
不動産の相続登記とは、不動産の所有者の名義を、相続によって引き継いだ方に移動させる手続きです。
義務化の背景
所有権の名義変更手続きのためには、法務局で登記簿の変更申請をおこないます。
これまでは、相続をしても変更手続きは任意でしたが、2024年4月より、相続した場合の登記が義務になりました。
所有者不明の問題とは
義務となった背景には、所有者不明の問題があります。
登記簿でも所有者に連絡が付かない状態のまま放置されていると、不法投棄や不法占有などの原因となりかねません。
所有者が不明な土地は、公共事業のための工事や、もし災害が起こった場合の復旧工事の際に、大きな妨げとなります。
また、管理が行き届かない土地は樹木や草が伸びるまま放置され、日照を遮り、近隣住民の生活環境や治安にも影響を及ぼす可能性もあるでしょう。
さらに、放置されているままでは、虫や小動物が住み着くなど、さまざまな問題が生じます。
年々所有者不明の土地は増え続けていて、現在では国土の2割を超えていると推定されていて、大きな社会問題です。
所有者が分からない土地は、有効に活用するのも難しいため、経済的な損失にもつながります。
所有者不明の土地の増加を防止する目的のため、民法が改正され、相続による変更が義務付けられました。
メガ共有地問題
不動産の相続人が複数いる状態で登記が未了のままでいると、さらに新たな相続が生じて、権利の所有者がどんどん増えていきます。
このような状態で大勢の権利者がいる不動産を、メガ共有地と呼びます。
数十人の権利者がいると、売却やリフォームをしたくても、権利者全員の同意が得られにくくなるなど、問題が起こる可能性もあるでしょう。
所在が分からない方がいると、合意を得るための協議も開催できません。
また、持分を売却される、差し押さえなどで第三者に権利が移る可能性があるなど、より権利関係が複雑になるケースもあります。
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不動産相続登記の義務化の内容や罰則
民法が改正され、2024年4月1日より、不動産を相続した際には、法務局へ変更の申請が必要となりました。
詳細な内容や罰則の内容についてみていきましょう。
相続登記の申請義務化
民法改正によって、相続を知った日から、3年以内に相続登記の申請をおこなう義務が発生します。
遺言によって受け継いだ場合も該当します。
また、2024年より前に発生した相続分にも適用されますので、注意が必要です。
過去の相続分に関しては、2027年3月までが期限となっていますので、早めに手続きを進めましょう。
変更がされていないと、法務局によって催告がおこなわれます。
この催告にも従わないと、決められた期限までに正当な理由なく手続きを放置していると、10万円以下の罰金を科されるおそれがあるため注意が必要です。
3年以内に変更がおこなわれない正当な事情がある場合には、法務局によって事情が考慮されるケースもあります。
遺言書の有効性に問題があり、係争がおこなわれている場合や、不動産の相続人が多数いて協議に時間がかかるなどが該当の理由です。
また、重い病気や経済的な事情など、個別の事情についても法務局が判断します。
相続人申告登記の創設
民法の改正にあたって、新たに相続人申告登記の創設がおこなわれました。
相続人申告とは、不動産を相続した人が、相続の開始と、自分が相続人である旨を、法務局に申告する手続きです。
土地の共有者で連絡が取れない親族がいて、遺産分割協議が進まない場合には、変更手続きの期限の3年を過ぎてしまう可能性があります。
期限内に登記変更ができない方のための救済措置として、新しく創設された制度が相続人申告登記です。
申告登記の手続きは法務局へおこないます。
電子署名や押印などは不要で、オンラインでも申請手続きができるなど考慮されています。
また、通常の場合、登記の変更手続きには登録免許税が課せられますが、申告登記には登録免許税はかからず、非課税扱いです。
申請のための必要書類は、申出人と被相続人の戸籍謄本です。
法務局にある申出書に必要事項を記載の上、法務局に提出します。
注意点としては、不動産の所有権を移動する手続きではありません。
そのため、遺産分割協議がまとまった後に、所有権の登記手続きを改めておこなう必要があります。
登記名義人の氏名または名称、住所変更の登記の義務付け
さらに2026年4月1日より、変更があった場合、登記名義人の氏名または名称、住所変更の登記の義務付けもおこなわれます。
変更があった場合には、2年以内に変更登記が必要です。
もし、変更事項があっても手続きをしない場合には、5万円以下の罰金が新たに設けられました。
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不動産の相続登記の義務化にともない相続したくない場合のために創設された制度
相続が発生しても、さまざまな事情があり、故人の不動産を相続したくないと考える場合もあります。
相続したくない場合には、どのような制度を利用して手続きを進めれば良いのでしょうか。
制度の内容や注意すべき点について、みていきましょう。
土地所有権放棄
故人から土地を相続しても住む予定がない、遠方のため管理ができない、税金がかさむなどの事情があり、相続したくないと考える方もいます。
相続をせずに、放棄や処分を検討する場合もあるでしょう。
民法では、土地の所有者がいない場合は、国庫に帰属すると定められていますが、これまでは土地だけの放棄はできませんでした。
近年、所有者が分からない土地が増えている問題を踏まえ、民法が改正され、相続したくない場合の土地所有権放棄措置も設けられました。
相続土地国庫帰属制度では、相続したくない不動産は、法務局に申請して審査を受け、法務大臣の承認を得たうえで、国庫に帰属が可能です。
不動産のみを放棄し、預貯金などの財産は、そのまま受け継げます。
土地所有権放棄制度は、通常の手続きとは異なり、特例の扱いです。
制度利用の注意点
この制度の導入により、所有権放棄に関する法律の整備が進み、実際に適用される機会が増えた点が大きな改正内容です。
以前は、所有権放棄が法的には存在していたものの、厳しい条件や不明確な基準のため、実際には適用が難しかったのです。
今後は、管理が行き届かず所有者不明の土地が増えるのを防ぐため、一定の条件のもとで所有権放棄が認められます。
制度利用の注意点
制度を利用して放棄を検討する際には、注意点があります。
利用できるのは相続や遺贈によって、所有権を得た方です。
建物が残っている土地や境界が明確ではない、係争している土地などは承認されません。
担保権が付けられている土地や、土壌汚染がある土地も承認の対象外です。
また、申請をおこなう前には、相続の登記が必要となります。
名義が共有となっている場合は、一斉に申請しなければなりません。
放棄のために必要な負担金
不動産を放棄するためには、土地の管理費用相当として、負担金の納付が必要です。
負担金は1筆ごとに必要で、標準的な10年分の費用とされています。
田畑や原野、宅地は基本的に20万円ですが、一部の市街地や、森林は面積によって負担金が決まります。
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まとめ
所有者不明土地の増加防止のため、2024年より不動産を相続した場合には登記の変更手続が義務付けられています。
相続を知って3年以内に手続きをおこなわないと、罰金が科される可能性があります。
相続の予定がある方は、専門家と相談のうえで必要な手続きを進めていきましょう。
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